ヴェネチア映画祭3冠
「地上と地下」「進歩と伝統」「光と闇」を描き出す
壮大な時間のシンフォニー
『四つのいのち』から11年、フランマルティーノが到達した新たな境地──それは「地上と地下」、「進歩と伝統」、「光と闇」を対位法的に描き出す壮大な時間のシンフォニー。第78回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞ほか3冠に輝いた本作は、イタリアの高度経済成長期という歴史的文脈を背景に、人間が未知の領域へと踏み込む行為の意味を問う。極限まで抑制された音響設計、闇の中で微かに揺れる光、重力と身体の関係──フランマルティーノは「下降」という運動を通して、映画の新たな次元を切り拓いた。撮影監督は、ゴダール、ロメール、シュミット、オリヴェイラなど、数々の名監督との協業で知られる名手レナート・ベルタ。暗闇を探索する探索家たちの未知への希望と恐怖を美しい陰影によって見事に捉えている。
若い探検家たちは地図もない状態で地下683メートルの未踏の深淵に挑み、アセチレンランプの光を頼りに洞窟の構造を測量・記録する。一方、地上では老羊飼いがポリーノ高原の広大な自然の中で、病に苦しみながらも静かに最期を迎える準備を進める。彼の死は、洞窟探検家たちが深淵の最深部に到達する瞬間と重なり、生と死、時間と空間の壮大な循環を描き出す…。