カンヌを熱狂させた、生命の循環を描く驚異の映像詩
老いた羊飼い、一匹の子ヤギ、巨大な樅の木、そして炭──カラブリアの山村で静かに営まれる生の循環を、セリフをほとんど用いずに描き出した比類なき傑作。第63回カンヌ国際映画祭「監督週間」でスタンディングオベーションを浴び、世界中の批評家を熱狂させた本作は、まさにフランマルティーノの代表作と呼ぶべき一作。人間を世界の中心に置かない、ラディカルなまでに平等な視点──羊飼いの臨終から子ヤギの誕生へ、樅の木の伐採から炭焼き窯の煙へ。ピタゴラス派の「四つの転生」の思想に基づく構成の中で、人間、動物、植物、鉱物が同じ重みで映し出される。圧巻は、村の犬が巻き起こす約8分間のワンカット──演出と偶然の奇跡的な融合が、「映画とは何か」を問い直す。物語ではなく、時間そのものを体験する88分。それは映画館という空間でしか成立しない、純粋な映画的悦楽である。
イタリア最南端、カラブリアの丘の村に暮らす老いた羊飼い。病に侵された彼は、教会の床の塵を水に溶かして飲むという迷信的な治療法に頼っていた。ある晩、「魔法の粉」を使い果たした彼は絶望し、静かにベッドに横たわり、翌朝、眠るように息を引き取る。その後、彼のヤギの群れは新しい牧夫に引き継がれ、その中から1頭の子ヤギが誕生する…。